原発災害時のヨウ素剤、幼児用なし 防災指針案への憤慨

原子力規制委員会の原子力災害対策の指針案で、原発立地自治体に不安が広がっている。指針案は甲状腺の被曝(ひばく)を軽減する「安定ヨウ素剤」を原発の半径5キロ以内の全戸に配布し、避難の際に飲用させる方針だが、乳幼児向けの安定ヨウ素剤は国内で製造されていない。甲状腺がんの発生率は子供ほど高いともされているが、医薬品メーカーの対応も不透明なままで、「法的な制度整理を含め、必要な措置が盛り込まれていない」などの不満が広がっている。

子供の服用に事前作業

 原発から半径5キロ圏の避難基準は、原発の原子炉の状態を前提にしている。震度6弱以上の地震が発生すると国や自治体が情報収集を開始▽原子炉で冷却水漏れなどの事態に至ると、自治体が避難やヨウ素剤服用を準備▽原子炉が冷やせなくなったりした場合には避難、となる。

 指針案はあらかじめ5キロ圏にヨウ素剤を全戸配布することになっている。原子力規制委事務局は「避難の際、飲むという考え方だ」としているが、原発14基が立地する福井県の災害担当者は「どのタイミングで飲ませるかの服用基準が示されていない」ととらえる。

 また、乳幼児向けの製品が国内にないことも問題だ。
 国内のヨウ素剤は丸薬と粉末しか販売されていない。乳児を含む子供の服用は、粉末を水に溶かしてシロップを加える方式が採られるが、緊急時に計量して希釈してといった悠長な作業に現実味は存在するのか?

 ヨウ素剤をてがける医薬品メーカーも「丸薬を割って子供に飲ませるのも、計量が正確ではなく推奨できない」と話す。

開発、輸入は先行き不明

 原子力規制委事務局やメーカーに聞くと、国内ではシロップ状に加工した既製品としての子供用ヨウ素剤は製造されていない。海外に製品があるが、輸入は認められていないという。規制委事務局は「子供は大人に先んじて避難してもらう」と説明する。

 また、薬品の開発については「規制委からお願いすることはない。厚生労働省や関係機関との話し合いの中で、そうした話が出るだろう」と縦割りの話になる。

 別の医薬品メーカーは「さまざまな要望があることは知っているが、開発見通しはお話できない」としたが、「過敏症の人もいるという薬なので、使用には注意が必要だ」と説明する。

 また、厚生労働省は服用に医師の指示が必要と自治体に通達しており、「副作用があった場合の補償をどう負うのかすら示していない。これでは置き薬のように扱えない」(原発立地町の関係者)という困惑は当然だろう。
更新と管理どうする?

 事前配布の指示は国から来るが、実際の各戸配布と管理は自治体に任されることになっている。負担も大きい。

 安定ヨウ素剤の使用期限は3年。指針案が採択された場合、3年おきに各戸のヨウ素剤を回収して更新するほか、家庭での保管状況の把握も必要だ。

 ただ、服用量は丸薬の場合、大人1人1日につき2錠。この分量で家庭に管理を丸投げすると、うっかり紛失というケースは当然起こる。しかし、いざというときにないでは済まされないだけに、管理側の責任は重い。

 指針は2月中にも改定を終える方針で、関係自治体は住民の避難方法などをまとめた地域防災計画に反映させる。だが、ヨウ素剤の服用基準、開発、管理方針ともに定まらない中で、「指針案は理想をあげているが、現実に落とすとネックが多い」という批判が出るのは当然だ。現実味のなさへの非難は、そのまま子供たちの安全を心配する悲鳴に聞こえる。(平岡康彦)産経ニュース

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